【小学生向けプリントサイト】どこに住んでいても、学びに手が届くように:海外で育つ子どもたちと、日本の教材のアクセシビリティ

こんにちは。きりんドリルを運営している、しょうたです。補習校とオンライン家庭教師で、小学生に国語と算数を教えています。
「アクセシビリティ」という言葉は、情報やサービスへの手の届きやすさを指します。日本で暮らしていれば、書店で問題集を選び、分からないことは学校や塾で尋ねることができます。一方で、海外で暮らす子どもたちにとっては、その一つひとつが簡単ではないことがあります。
今回は、海外で日本の学習を続けるうえでの「手の届きにくさ」と、教師として教え、教材をつくる立場から考えていることをお話しします。
海外で学ぶ子どもたちの状況
文部科学省の資料によると、2017年時点で、海外に暮らす義務教育段階の日本人の子どもは約8万2千人とされています。また、2026年4月現在、全日制の日本人学校は世界47か国・1地域に91校あり約1万5千人が、補習授業校は51か国・1地域に246校あり約2万600人が学んでいます。
年や範囲が異なるため単純には比べられませんが、これらの学校に通っていない子どもも少なくないことがうかがえます。
支援の仕組みもあります。その一つが教科書の無償給与で、海外に在留する子どもたちに、在外公館などを通じて日本の教科書が届けられています。令和5年度には、約13万7千人に給与されました。
ただ、教科書があっても、練習問題や家庭で学ぶためのリソースが十分に揃うとは限りません。
手の届きにくさは、一つではありません
教材そのものが手に入りにくい
近くに日本の書店がなければ、問題集を手に取って選ぶことはできません。取り寄せには送料や日数がかかり、届いてみるとお子さんに合わなかった、ということも起こります。
通える場所が限られている
補習校は世界各地にありますが、近くにあるとは限りません。通うために長い時間がかかるご家庭もあれば、現地校の活動と重なるご家庭もあります。また、補習校の授業は国語が中心で、算数などを扱うかどうかは学校によって異なります。
また、日本人学校があっても補習校はない場所も多いです。
例えば、バンコクではバンコク日本人学校という日本人学校の中では世界最大で最も歴史がある日本人学校がありますが、補習校はなく、塾に通うしかありません。塾は、バンコク市内にはたくさんありますが、帰国子女向けの進学塾の割合が大きく、日系企業の駐在員などで手当がなければ通わせるのも難しいという話をよく聞きます。
これもバンコクの事例ですが、普段はインター校に通っていて、週1だけでも日本の教育課程で学びたいという希望があっても補習校がないことで、諦めざるを得ないという子どももいます。実際にわたしがオンライン塾で教えているお子さんは、生まれてから小学校高学年までずっと英語の環境で育ってきたために学習言語は英語になっている。けれども、日本語で学ぶこともできるレベルにあるので、補習校に行きたくても場所がない、機会が限られているという状況もあります。
教えてくれる人が身近にいない
家庭で学ぶ場合、保護者の方が先生役を担うことになります。日本語や日本の学習に詳しい大人が近くにいないご家庭もあり、国際結婚のご家庭では、日本語を話す保護者がお一人だけということもあります。答えは分かっても、教え方に迷うことは少なくありません。
普段わたしがご相談いただくご家庭は、
「答えはわかるけれども、教え方がわからないので先生にお任せしたいです」
「日本人のわたしが国語の勉強を教えるべきだと思うのですがなかなかそこまで手が回らなくって」
と、様々な要因から家庭内で学習を進めることは簡単ではないことがわかります。
日本語に触れる時間が少ない
現地校での生活が中心になると、日本語を使うのは家庭の中だけになることもあります。同じ学年の内容でも、日本で暮らす子どもとは日本語だけで見ると語彙や読む量がどうしても少なくなってしまいます。
用紙や機器などの細かな違い
見落とされがちなのが、印刷の環境です。北米などではレターサイズが一般的で、A4のPDFをそのまま印刷すると、端が切れたり縮小されたりすることがあります。または、プリンターが家にないご家庭もあります。一つひとつは小さなことですが、毎日続ける学習では、こうした手間が負担として積み重なります。
きりんドリルが大切にしていること
きりんドリルは、補習校やオンライン塾講師として教える中で感じた、こうした課題を出発点の一つとしています。すべてを解決できるわけではありませんが、次のことを大切にしています。
- 無料で、登録せずに使える:4,000枚を超えるプリントを、会員登録なしでダウンロードしていただけます
- A4とレターの両方を用意する:すべてのプリントに両方のサイズのPDFがあり、白黒印刷でも見やすいように作っています
- 紙がなくても学べる:PDFはタブレットのノートアプリに取り込んで書き込めます。ドリルやタイピングゲームは、画面の上でそのまま取り組めます
- 教科書の順番で探せる:単元の名称と順番は、海外の日本人学校や補習校でも配布されている教科書を基準にしています
- 教え方まで添える:解答に加えて、つまずきやすい点と声かけの例をまとめた保護者用の解説を、すべてのプリントにつけています
- 学年にとらわれず戻れる:算数は全単元が4段階に分かれており、前の学年にも戻りやすいようにしています
プリントだけでは届かないもの
一方で、プリントで補えることには限りがあります。
日本語で話す相手、同じ環境の友達、「分かった」と一緒に喜んでくれる先生。これらは、教材だけでは代わりになりません。補習校をはじめとする学びの場や、そこで子どもたちを支える先生方、そして毎週送り迎えをされている保護者の方々の力は、とても大きなものです。
きりんドリルが担えるのは、その中の一部です。学校や家庭の取り組みの近くで、「今日やる1枚」をすぐに用意できる存在でありたいと考えています。
住んでいる場所で、機会に差が出ないように
海外で育つ子どもたちは、二つの言語や文化の間で学ぶという、豊かな経験をしています。その子たちが日本語や日本の学習を続けたいと思ったときに、住んでいる場所が理由であきらめずに済むようにしたい。選べる教育、教育のアクセシビリティのオプションとしての一つとして「きりんドリル」をご利用いただければと思います。
それが、私がこのサイトを続ける理由の一つです。
海外のご家庭に向けた取り組みは、海外・補習校のご家庭へにまとめています。「こんな教材があると助かる」「この国ではここが使いにくい」といったお声は、ぜひお問い合わせからお聞かせください。実際に海外で暮らす方々のお話が、次の教材づくりの手がかりになります。